三井住友アセットマネジメント社長の横山邦男さんが
以下の記事を書いています。
(引用はじめ)
確定拠出年金(DC)については制度の変更により、資産運用の手段としては非常に活用しやすくなります。確定拠出年金とは、企業年金の一形態です。
これまでの企業年金は大半が確定給付型といって、年金の原資となる運用資産を毎年、一定の利回りで運用したことを前提とした結果、得られる収益も含めて、将来の年金給付額を決定しています。
だから確定給付になるわけですが、問題は、前提となっている利回りを年金受給者に対して確定させていたとしても、実際に運用しているときの利回りは、株価や債券相場、為替相場によって常に上下することです。
もちろん、実際に運用している利回りが、前提となっている利回りに比べて高ければ問題ありませんが、逆に低いと「逆ザヤ」状態になります。
この場合、年金の積み立て不足という問題が生じます。受給者に対して支払う年金額は、その利回りで運用したことを前提にして決められているため、逆ザヤ状態が長引くほど、年金の積み立て不足が深刻になっていくのです。そして最終的に、その積立金不足分は、企業が自社の損金として処理することになります。
日本では1990年代を通じて、バブル崩壊の影響による不景気が長期化し、多くの企業年金は運用難に陥りました。不景気によって金利が下がり、かつ株価も低迷したため、逆ザヤが拡大したのです。
しかも、景気低迷で企業業績が落ち込んでいたため、積立金不足を解消するための損金処理に、企業自身が耐えきれなくなってきました。こうした中で登場したのが、「確定拠出年金」でした。
確定拠出年金の運用利益や損失は受給者に帰属する
確定拠出年金の場合、運用によって生じた損失は、年金受給者側の負担になります。その代わり利益については年金受給者に帰属します。確定拠出年金は、実績分配型の年金なのです。そして、どのようなファンドを用いて、どのようなポートフォリオを組んで運用するかについては、全て年金受給者が自分の判断で決めます。
このように言うと、恐らく多くの人は、「年金なのに損をするのは嫌だから、確定給付年金の方がいい」と思うでしょう。表面的に見れば、確かに確定給付年金は、年金受給者として損をしていないようにも見えます。でも、よく考えてみてください。年金加入者として保険料を払っているとき、年金が逆ザヤになったらどうなるのでしょうか。
そう。積立金不足を補うため、勤務している会社が、その不足分を損金処理することになります。それは企業利益にとってマイナス要因です。これが遠因となり、給料やボーナスの支給額が引き下げられたり、あるいはリストラ対象になったりする恐れがあります。つまり、株式や債券などマーケットでお金を運用している以上、そこで生じた損失は、最終的に誰かが負わなければなりません。確定給付年金であれば企業ですし、確定拠出年金であれば年金受給者です。
ただし、確定給付年金の場合は、確かに表面上は企業が損失を負担しているように見えますが、回り回って最終的には、その企業で働いている従業員に、損失が転嫁されるリスクがあります。
中途解約できないから時間分散投資の効果が高まる
さて、確定拠出年金のざっくりしたイメージは、ご理解いただけたでしょうか。
では、どうして確定拠出年金が時間分散投資の効果を高めることにつながるのか、という点についてご説明しましょう。
簡単です。それは一度加入すると、長期で積み立て運用せざるを得なくなるからです。確定拠出年金は、原則60歳にならないと積立金を引き出すことができません。このルールは実に厳格な運用が行われていて、60歳になるまでは一切解約できないと考えておいた方が良いでしょう。したがって30歳で加入したとしたら、60歳までの30年間は中途解約できず、積み立て投資を続けることになるのです。
積み立て投資を用いた時間分散投資の効果を高めるためには、とにかく続けることに尽きます。確定拠出年金は毎月、一定額で積み立て投資を行いますが、このような定額投資は、価格が安いときには購入口数が多く、価格が高いときには購入口数が少なくなることによって、平均の買い付け単価を下げる「ドルコスト平均効果」が期待できます。この点については前々回説明した通りです。
そして、ドルコスト平均効果を最大限に高めるためには、長期で続けることが大事です。株価は景気のサイクルによって上下動を繰り返していますから、長期で続けるほどドルコスト平均効果が高まるのです。せっかくの定額積み立て投資も、わずか1年しか行わなければ、効果は期待できません。したがって、加入したら原則60歳まで継続しなければならない確定拠出年金は、ドルコスト平均効果を高めるうえで非常に適した資産形成手段と考えられます。(引用おわり)